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「レゲエを野外で存分に鳴らしたいんですけど、スピーカー見に行っていいですか?」という威勢の良い電話があった。これから向かうので2時間ほどで着くという。検討されているスピーカーの型番はと尋ねると全く知識がないので現物を見て決めたいとのこと。
約束の時間通り、若者はやってきた。
駆け出しのレゲエDJ。長身で坊主頭、ボリュームのあるボトムスに丈は長めのTシャツ、手には飲みかけの缶ビールだ。渋滞を心配して車は使わず、電車に揺られてやってきたらしい。
お勧めしたいと予め用意したJBL 4341と、Mark Levinson ML-11L + 12ALを見るやいなや「うわぁ超かっけー」と声を漏らす。
さっそくオフィスにあるレゲエを再生、音を聴いてもらった。とにかくレゲエは低音の量感が命。イレギュラーではあるが、スピーカーのアッテネーターを全て絞れるだけ絞ることにする。つまりウーファーのレベルを相対的に上げてみた。
「ズンッズンッズンッ」
普段、ジャズを鳴らすときとは、全く違う設定ではあるものの、これが非常に良くレゲエを再現している。藤原様には、ますます惚れ込んでもらえた瞬間のようだ。
「これを買います!」
直感に従うというのはまさにこういうことか。藤原様の潔さを目の当たりにしてあっけにとられながらも、念のために別モデルも紹介して聴き比べてもらった。
ダブルウーファーの4435だ。このスピーカーが有するウーファーは2234H×2。地を這うような低音なら得意中の得意で、レゲエにうってつけかと思い、4341との比較試聴をしてもらった。4435であれば確かに低域の量感は増す、しかし、輪郭の明瞭度は4341に軍配があがった。
「決めました、4341を買います!」
アンプと合わせて100万円強。ローン決済で月々の出費を抑え長期で支払いたいという。以前、私はブログで「近頃の若者には欲がないために、頑張って手に入れたいという高価で優れた製品とは縁遠くなっている」趣旨のことを綴った。藤原様は違う。強い意志に突き動かされ、自分が奏でたい音楽に対するビジョンを持っている。このJBLスピーカーをどうしても手に入れ、野外でたくさんの人に自分の作る音を聴いてもらいたい、そんな気概が伝わってきた。
ローン申請を済ませ、審査の結果待ちをすること数日。初めてのローンとあって、信用履歴がないためローン会社も慎重で通常よりも審査に時間を要しているようだ。実は藤原様、もうじき地元で行われるイベントでどうしてもこの4341とアンプを持ち込んで音を披露したいらしい。日が迫っていて、審査の進捗を確認しようと何度も藤原様から電話を頂戴した。
そして遅々としてローン審査の結果が出ないまま、イベントの前日が訪れる。藤原様から電話があり、ともあれもう一度来社されたいというのだ。再び2時間後、藤原様が出来うる限り集めた現金を持って来られた。ローンに頼らず直接購入することに決めたようだ。親御さんに頼み込んで貸してもらったようでもある。
「どうにかこれで売ってください!」
この日用意された現金は、商品合計額に対して10万円以上不足していた。しかし、彼の気持ちはよくわかる。オーディオ離れと言われて久しい世代の若者に、どうにか夢を叶えてあげたい一心で、大胆にも10万円以上の値引きサービスをした。本当に感謝してくれた。商品を彼の車に積み込む手伝いをすると、何度もお礼を述べてから弊社を後にする。あふれ出す嬉々とした表情を見て、きっとずっと大事にしてくれそうだと感じた。
藤原様は、JBL 4341というスピーカーを弊社に足を運ぶまでご存じなかった。もとより他のどのモデルも、オーディオ機器に対する知識もない。4341は希少であるため割高なスピーカーである。従ってこの大きさのクラスのJBLスピーカーを買おうと考えたとき、他の割安なモデルの選択肢もあるわけだ。そもそも4341に対する思い入れが別段あるわけでないのならなおさらである。ところが、このスピーカーを聴いた人は、知識があろうとなかろうと誰しもが欲しくなる。そんな音の魅力を持っている。だから藤原様はこれを買おうと決断した。何ともすごいスピーカーだ。中野・ジャズダイニングバー『Sweet Rain』の女性オーナーもそうだった。弊社にきて何種類も聞き比べてもらった末、価格が一番高価ではあるが4341の音をなにより気に入って、購入に踏み切られた。(最近、Sweet Rainのお客様が弊社よりスピーカーを購入してくださいました。ご紹介に感謝します。)
さて、藤原様のイベントでの活躍はと言えば・・・予定していた公園での披露はやめて、より多くの人が行き交うJR柏駅前に場所を変更してゲリラ決行したようだ。JBL4341とレビンソンを持ち出して駅前でレゲエライブ。かっこいいじゃないか。実に生き生きとしながら仲間たちと盛り上がったに違いない。立ち止まって音を聴き興味を抱いてくれる人が集まり、そこからまた新たな人とのつながりが生まれたと藤原様が話してくれた。
都内でやってくれれば私も見に行きたいと伝えると、是非やりたい、その日が決まれば真っ先に誘ってくれるという。このスピーカーとともに将来目指したい抱負も教えてもらい、意気揚々と電話を切った。
藤原様、ご購入ありがとうございました。いつか一緒にイベントやろう!!