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2012年11月24日土曜日

バンダイのゴールデンブックシリーズ



私が我が娘と同じ年の頃、ちょうど2歳から3歳にかけて大好きだった絵本を、引っ張り出してきた。バンダイのゴールデンブックシリーズ。中でも特にひいきにしていた2冊が「がんばれ!がんばれ!あかいしゃしょうしゃ」と「てぶくろ なくしたの」。

表紙は破れ、小口はぼろぼろだけど、ページは欠けずに揃っている。繰り返し読んでいた当時の記憶が蘇る。夕暮れどき圧力釜で炊ける玄米の匂いや、土曜の午後、FMから流れるコーセー歌謡ベストテンの音。まだ文字が読めない子供にとっては、挿絵こそが楽しみの全てだった。

このシリーズの輸入絵本はとりわけ色使いに独特の深みがある。色鉛筆やクレヨンで例えるなら、基本の12色セットや24色セットには決して含まれていない微妙な色合い。それこそ、お金持ちの子供が買ってもらえるような500色セットなんかにようやく登場するようなトーンで構成されていて、品位があった。

なぜそんなにも好きで好きでいつもこのシリーズの絵本を眺めて、そして好んで読み聞かせてもらっていたのか。それは今見返しても感じる引き込まれる豊かな色調だったと思う。子供向け絵本と言えば、とかく鮮やかで目を引く、悪く言えば通り一辺倒の子供だまし的チープな画調が多いように思う。一方このシリーズは一見沈んだ色合いだが、階調が多彩でバランスに富んでいた。

ふと背表紙を見ると初版だと分かる。発行年月日は昭和53年7月10日。自分が生まれるちょうど1ヶ月前のことだ。色調豊かな絵本を選んでくれた母親には感謝している。あれから30余念経った今、娘への絵本を選ぶ基準は知名度や口コミよりも、やはり美しく色調豊かな挿絵こそが重要なのだと再認識している。

30年間熟成した紙の匂いもまた独特で好きだ。近年多くなっているiPadをはじめとしたタブレットの電子絵本は便利だし仕掛けや音に工夫があって刺激にはなる。しかし、それがかえって子供自身が物語の奥行きを想像するプロセスの妨げにもなるだろう。

静かに心落ち着かせて繰り返し読むと、記憶から離れない世界観を頭の中で紡ぎ出せるというのが優れた挿絵を持った紙絵本の良さだ。

そんな微妙な色調を意識しながら生まれているのが新たに追加したカラーのNS-1000Mでもあります。