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2018年6月21日木曜日
ベヒシュタインのピアノ調律と、スピーカーチューニングの極意
新たなピアノが我が家に納まりました。ベヒシュタイン・コンサート8(C.BECHSTEIN Concert 8)という、アップライトピアノの中では大きめとなる高さ132cmのモデルです。
フランスのル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジック誌にて「非常に素晴らしいアップライトである。その突き抜けるような力は、実に美しく自然な音の伸びによって、響きあうハーモニーからなる幻想の虹を描き出す。これまでに聴いたこともないような豊かな色彩。アップライトの理想像に限りなく近い。この楽器でならば、どんな様式の音楽でも弾きこなすことができる。響きのバランスは実にグランドに近く、残された疑問といえば、それは、わざわざグランドピアノを買う必要があるかどうかということ。世界一のアップライトピアノといわれて久しい楽器である。」との評価を得るほど、群を抜いているピアノです。
国内外の様々なピアノを指弾しながら選択したこの一台には、曲になりきらない子どものお遊び演奏でさえも、心地よい芸術的サウンドに変えてしまうほどの表現力があります。
しかし納品直後には、硬くぎこちなさがどの鍵盤にも付きまとい、妙な鳴きが不自然に残るという点にしばらく悩みました。そこで横浜にあるピアノクリニックヨコヤマの調律師・横山ペテロさんに頼み、改めて調律と整音を行って頂くことにしました。
結果、実に明るく朗らかで本当に気持ちよく響くピアノに落ち着いたのです。横山さんの説明によると、一般的なユニゾンでの調律方法では、倍音であるハーモニクスが早く減衰し、低い基音のみが微妙な音の「ズレ」となって、うねりが残るようです。私が気になっていた「妙な鳴きが不自然に残る」ことの原因は独り歩きしてしまう響板の共振にありました。本来は響板と弦とが揃って響き渡り、同じタイミングで消え入るはずが、響板に起こる共振のみが取り残されて、早々にハーモニクスは鳴り止んでしまうことから感じていた現象のようです。
喉を開けて体全体で声を奏で上げるようなヨーロッパの声楽と同様に、ヨーロッパで作られたピアノにもより美しく鳴らすための調律法と考え方があるのだということを、目の前で丁寧に調律して頂きながら学びました。
スピーカーチューニングとカスタムにおいても、確固たるこだわりと独自のねらいとが出音の良さに大きく関係します。ケンリックサウンドでは、響きの美しさ、ユニット間のつながりの自然さ、初めの一音が鳴った瞬間に判断できる応答の鋭さ、に代表される良い音に必要不可欠な要素を、常に高い水準で意識しながら日々の作品作りに励んでおります。