お客様が捨てようとさえ考えていらっしゃったスピーカーを、ここまで素晴らしい音に復元いたしました。
神奈川県の沼田様は約30年前に購入されたAR-3aの復刻版を、忙しさなどから約20年以上使用せず、放置していたそうです。昨年9月頃、久し振りに鳴らしてみると間の抜けた低音と悲惨な音しか出なかったとのことです。スピーカーネットを外してみると案の定30cmウーファーのスピーカーエッジがひび割れていることにすぐ気づかれました。
新たに現行のスピーカー購入も考えたそうですが、昔聴いた音が忘れられず、修理が可能であればと当社にメールを頂きました。危うく捨てることすらも頭をよぎったとのことでした。
スピーカーはお預かり点検の後、極めて追従性の高い専用クロスエッジの製作やアッテネーター交換、ユニット間の位相調整など、各作業を経て完成いたしました。そして本日ご来店、聴き慣れたCDを持ち込まれて曲を再生するごとに、驚きの連続のご様子でした。私もそばで一緒に音を楽しみながら、嬉しい限りでした。
3ヶ月という長い期間、大変お待たせいたしました。これからまた30年、そして息子さんの代へも引き継いで、末永くお使いください。
【お客様のコメント】
昨日は、スピーカー修理の検収に貴重なお時間を頂きありがとうございました。
早速ブログを拝見させて頂きました。
私も、齢62歳で齢を重ねるにつれトキメキが少なくなっておりますが、指折り数
えてこの日の来るのを待っておりました。試聴室で、最初に山下達郎の音楽が鳴った時、私は思わず涙がこぼれそうになりました。それほど、期待していた以上の音質でAR3aが、復活したのです。本当にありがとうございました。
私は、某電機メーカーに勤め2年前定年を迎えました。入社して約30年間、CRTプロジェクター、LCDプロジェクターの設計開発に携わりました。社長さんをはじめケンリックの皆様のオーディオに対する情熱と生き生きと働いておられる姿は、往年の私の職場を思い出させて頂きました。特に、試聴室で社長自ら最後のブラシュアップされる姿には感動いたしました。
前回に引き続き、この度も私の息子を連れてお邪魔させて頂いたのは、皆様が生き生きと仕事をする現場を見せて得るのもがある思ったからです。本人も大変勉強になったと申しております。
特に、細井社長が、おっしゃられておりましたが、最高のものを作るには、スキルに加えて、研ぎ澄まされた感性を磨き続ける事とそのために遊びを含めた広い視野と見識が必要というお考えには、まさに私が現役の時進めたプロジェクターの画づくりに共通するものがあると共感させて頂きました。
もう一点は、最後まで妥協をしない姿勢で仕事を進める姿は、カスタマーに最高の満足を与える理想的なビジネスの形と思います。
昨夜は、夜遅くまで音楽に浸りました。末永く、大切に使って行きたいと思います。これからも宜しくお願いいたします。
最後に、老後の楽しみが一つ増えた事に深く感謝すると共に、御社が増々の繁栄をされる事、切にお祈りいたします。
【ケンリックサウンドからのコメント】
沼田様
とても嬉しいコメントをありがとうございます。
良い音の定義は人それぞれだとは思いますが、音を聴いた瞬間に、遠いあの日の思い出を瞬く間に呼び覚ましたり、初めて聴く曲なのに、不意に魂揺さぶられたり、人の琴線に触れる作用をもたらすのが、私にとっては良い音だと考えています。
低音が深くまで沈み込むとか、高音が自然に伸びきっているとか、明瞭さと心地よさが調和されているとか、解析すればその要素は色々と数上げられるとしても、心に訴えかける熱を帯びたエネルギーを宿すことは、技術一辺倒では為し得ない領域なのだと信じています。
「音は人なり」とはよく言いますが、たかが機械装置の組み合わせで鳴らす再生音だとしても、その人の紡ぐ音は、その人にしか出せないものですし、大げさに表現すれば生き様が音になります。スピーカーレストアという業務を通して、少しでも私たちの熱エネルギーが伝わったとすれば、それは何にも代えがたい喜びだと感じています。
この度は、誠にありがとうございました。