今回はJBL2121Hのボイスコイルの巻き戻しの様子です。エッジ交換依頼と言うことでお預かりしておりましたが、左右それぞれデータを取ったところ、特性の違いが大幅にあったため、ボイスコイルの巻き戻し作業を行いました。これら2本のユニットは実はJBL 4343Bに工場出荷時から収まっていると思われる個体ですが、驚くことに初期段階よりこのように左右の差違が見られるということが多々あります。
写真はボイスコイルの幅を測っている所です。ユニット右側が7.5mm、ユニット左側が6.5mmということで、ボイスコイル幅が1mmも異なります。つまり、それだけ巻き数が違うということ、左右でインピーダンスが大きく異なります。ユニットのダンパーを外し、内部の様子をチェックします。直流抵抗値は左右それぞれ下記の通りです。
右ユニット:7.0Ω
左ユニット:6.1Ω
1Ωの差はじっくりと聞き比べると、同じレベルでも音圧の違いが確認できます。インピーダンス測定器にて計測しても、その差は明らかでした。
2周巻き戻し後のDCR値
右ユニット:6.7Ω
左ユニット:6.3Ω
取り除いたボイスコイルの線材です。
上記写真後、更に2巻きほど巻き戻すと、直流抵抗はほぼ同じになりました。ほどいたコイルの先端と、リード線に伸びる線の先端部分を半田で接合します。手先の器用な熟練したKRSスタッフでないと、この巻き戻し作業は大変難しい作業です。
・巻き戻し前
コイルの巻き幅が、左右異なるのは一目瞭然です。左右で約1mmの巻き幅の差がありました。
・巻き戻し後
直流抵抗をチェックしつつ、巻き戻し作業を行いました。左右のコイルの巻き幅が同じになりました。
巻き戻し後のDCR値
右ユニット:6.3Ω
左ユニット:6.3Ω
以上の様に、左右のDCR値はぴったり同じになりました。同じくインピーダンスのグラフもほぼ同じカーブになりました。
これ以外にも左右のインピーダンス違いのケースとして挙げられるのが、ボイスコイルがギャップ内で擦れてショートし、インピーダンスが下がるということや、リード線の劣化による抵抗値の上昇があります。リード線に関しては最悪のパターンだと撚り線の内部断線ということもあります。
修理依頼を頂くお客様のユニットは様々です。ロット差などから、左右で特性の異なるユニットがペアのスピーカーに組み込まれていることも希ではありません。ケンリックサウンドでは左右の特性を揃え、同じ音圧に調節することで、ストレス無く、より快適な音楽を堪能して頂く事が可能となります。