2019年6月24日月曜日

スピーカーユニットの着磁 Remagnetizing the speaker components

こんにちは、ケンリックサウンドの熊木です。
Hello everyone, this is Kumaki from Kenrick Sound.

今日のブログでは先日実施した着磁作業について書きます。
Today I will write about the remagnetizing process we apply on our speakers.


これらが脱磁/着磁に使用する機械です。
This is the machine used to demagnetize, and magnetize magnets.

まず、各スピーカーユニットの磁束密度を測ります。
First, we measure the magnetic flux of each speaker component.


マグネットのギャップ内、4箇所の磁束密度を計測し、記録を取ります。
We take the measurements from 4 different points in each magnet gaps.

次に脱磁をします。一度磁力を抜き切ります。
The next step is to demagnetize the speaker magnets.


こちらの写真は脱磁されたスピーカーマグネットの磁束密度を計測している様子。数値が下がっていることから磁力がほとんど抜かれていることが分かります。
The speaker magnet in this photo has been demagnetized.  As you can see, the measurement of the magnetic flux is close to zero.


最後に改めて着磁を行い、しっかりと磁束密度が上がっている事を確認します。こちらもしっかりとデータを記録。前回のブログでも述べたように、適切な電圧と印加時間の条件、コイルとコンデンサーの組み合わせを駆使しなければ思うように磁力を与えられません。
Lastly, we remagnetize the speakers.  As I wrote in my last blog article, if we do not use the correct set-up of capacitors, coils, applied voltage, and applied time for the magnet, the magnetic flux will not be inserted correctly.

2019年6月23日日曜日

「価格帯の低い普及製品も作ってくれませんか?」との問い合わせに向けた回答



当社のYouTubeのチャンネルを見てくださる方から、こんな問いかけを頂戴しました。

「ケンリックさん普及機も考えてくれませんか?」

この方の年の頃は分かりませんが、今の若者がスマホやポータブルプレーヤーばかりで音楽を聴いていて、真のオーディオの良さを知らぬまま育つ世の中に、この先高級オーディオの世界は存続していくのでしょうか?という憂いから沸いた投げかけでした。

私が回答した内容はそのままブログでもご紹介したいので、掲載することに致します。



お問い合わせありがとうございます。現在では信じがたいですが、かつては家電メーカーもこぞってオーディオ部門が活気づき、ラジオやテレビCMでもバンバンとオーディオ機器の情報が飛び交っていました。

若者は本格システムに憧れ、秋葉原の店頭や行きつけのオーディオショップで新製品を拝み、一杯のコーヒーだけで良い音を浴びようとジャズ喫茶に入り浸るような文化がありました。

いつかは自分の部屋に、あの音を実現するのだと夢見つつ、穴が空くほどカタログ資料を読み尽くし、やっとの思いで一生懸命に働いたお金で大枚叩いて憧れを実現する、そんな気概がみなぎっていた時代だからこそ、良いものが、何とか無理すれば買える価格帯にも迷ってしまうほど豊富に揃っていたものです。

やがて若者は現実主義で保守的に変化し、無駄を嫌って合理性を唱え、夢や願望を持たなくなりました。オーディオ文化も縮小して、家電メーカーは撤退、国産ブランドは数えるのみに、そしてお手軽な格安中華機器か、超ハイエンド機器に二分されるような構図に行き着きました。

質の良い普及機が成立するのは需要のマスが十分大きく、高級機との製造バランスを保てる土壌があればこそです。とりわけ、当社のようなガレージメーカーは、手広く器用な展開を試みればたちどころに質が疎かとなり空回りの末、淘汰されるのは目に見えています。

売れるか売れないかというビジネスベースの思想以前に、私自身が心から欲しいと感じ得る音を作らなければ、自分の会社の存在意義はないと考えています。従って、こだわりの果てのコストがそのまま価格に乗じてしまうことについては、申し訳ありませんが止む無しと捉えております。



ともするとブームが去ったオーディオ業界を嘆いた後ろ向きな意見と思われるかも知れませんが、変に競争が激化する中で無理をした製品作りをするよりも、じっくりと腰を据えて最高を目指せる今の温度の方が私には過ごしやすく、お客様にも落ち着いて良い音へと誘っていけると考えているのです。

2019年6月13日木曜日

スピーカーユニットの着磁準備 Preparing the speaker components to be remagnetized

ケンリックサウンドの熊木です。
This is Kumaki from Kenrick Sound.

本日、ケンリックサウンドではスピーカーマグネットの着磁に向けた準備を進めています。
Today in Kenrick Sound, we are preparing for our speakers to get remagnetized.

長年使用したスピーカーのマグネットは減磁している可能性があり(特にアルニコマグネット)、正しく再着磁をすることによって(適切な電圧と印加時間の条件、組み合わせのコイルとコンデンサーがユニットごとに異なる)本来の磁力を取り戻し、スピーカーの持つ潜在能力を発揮することが可能となります。
Speakers that have been used for decades have a possiblity that its magnetic flux density has decreased (epecially Alnico magnets).  By remagnetizing the speakers(the set-up of capacitors, coils, applied voltage, and applied time varies for each speaker component), you will be able to pull out the full potential the speakers possess.

それに加えて、再着磁によりスピーカーユニット左右の磁束密度を整えることも狙えるのです。
Not only that, by remagnetizing the speaker components, you can adjust the balance of both channels, if there is a difference of density between the two.


大変多い数のスピーカーユニットを再着磁するために、下ごしらえだけでも丸一日がかかります。この写真に写っているのは準備を終えたごく一部のユニットたちです。実際にはこれの約3倍が総数です。
Since there are so many speakers to get remagnetized, just the preparation will take a whole day. This is just a portion of the speakers we are doing this time.


こちらの写真は、元々プラスチック製であるスロート部品を、アルミニウム青銅削り出し品へと交換するJBL 375 コンプレッションドライバーの、バラし作業過程です。
These JBL 375 compression drivers are being prepared to have its original plastic throats changed to aluminum bronze material.


着磁準備のためにバラしを終えたJBL 2402ツィーターです。
These are some JBL 2402 tweeters ready to be remagnetized.

次回のブログでは着磁そのものの様子を紹介したいと思います。
In my next blog article, I will write about the remagnetizing process.