2021年2月27日土曜日

真鍮銘板のガラスコートと150度での焼付作業 10th Anniv. KRS 4351 Brass plate 9H anti-corrosion Ceramic Coating & Burning



現在2ペア同時に製作している、ケンリックサウンド10周年を記念した特別仕様のKRS 4351スピーカーに装着されるアッテネータープレート。KENRICKを意味する私Kenjiと米国パートナーのRickによる直筆サインのエッチングが施された真鍮製の銘板です。ガラスコーティングを行い150度での焼付作業を経ることで9H相当の硬度が確保でき、耐腐食性能が向上します。

2021年2月26日金曜日

ケンリックサウンド10周年記念スピーカー KRS 4351ネットワーク作業【完成】 Crossover works on KENRICK SOUND 10th Anniversary 4351 [Complete]

こんにちは、ケンリックサウンドの熊木です。
Hello, this is Kumaki from Kenrick Sound.

本日のブログでは最近ネットワーク作業を紹介しているKRS 10th Anniversary 4351が組みあがりましたので,その姿をアップします。
We finally finished assembling the KRS 10th Anniversary 4351 that we have been working on lately, so I will show you guys some pictures of them.







低域:JBL 2231A(マスリングレス・アクアプラス塗布質量コントロール)
中域:JBL 2202A
中高域:JBL 2440 + 2311型アルミ青銅無垢削り出しホーン
高域:JBL 2405 + 075型アルミ青銅無垢削り出しホーン
Low range : JBL 2231A (Aquaplas finishing)
Mid range: JBL 2202A
Mid-high range : JBL 2440 + 2311 Style Aluminum bronze horn
High range : JBL 2405 + 075 Style Aluminum bronze horn

全てのスピーカーユニットは再着磁済み。2231A、2202Aは新品リコーン、2440、2405はダイアフラム交換を行い、微細な芯出しを行って組み上げています。
All of the speaker drivers have been re-magnetized. The 2231A and 2202A have been re-coned. The 2440 and 2405 have been installed alternate diaphragms. All five drivers have been carefully assembled so that the voice coil will place right in the center of the magnet gap.

背面に外付けしたコイルやコンデンサーはこの様になりました。
This is how capacitors and coils that were placed in the back looks like.

残る作業は最終音質チェック後、音響特性の測定をして完成です。
We still have to do some final tests to do, and take some data.

近々代表の細井が動画を撮影してアップしますので、どうぞ音質の方を楽しみにお待ちください。
In a few days, our boss Hosoi will film and upload some videos, so hope you guys check it out and see how it sounds.

2021年2月24日水曜日

ケンリックサウンド10周年記念 シングル駆動型Wウーファー KRS 4351 完成間近



現在2ペア同時に製作している、ケンリックサウンド10周年を記念した特別仕様のKRS 4351スピーカーが間もなく完成します。本来はバイアンプ駆動でしか鳴らすことができない15インチダブルウーファーの4Wayスピーカーを、何とシングルアンプ駆動であっさりと鳴らしてしまうことができる特殊なネットワークです。

ケンリックサウンド10周年記念スピーカー KRS 4351ネットワーク作業【続き】 Crossover works on KENRICK SOUND 10th Anniversary 4351 [Continued]

こんにちは、ケンリックサウンドの熊木です。
Hello, this is Kumaki from Kenrick Sound.

今日のブログでは引き続きKRS 10th Anniversary 4351用ネットワーク作業の続きを紹介したいと思います。
Today, I would like to continue sharing the crossover work for the KRS 10th Anniversary 4351 speakers.
 
こちらが完成したネットワークです。低域、中域、中高域、高域全てのフィルターにファインメットカットコアコイルとMundorf社のMcap EVO SilverGold Oilコンデンサーを採用。配線材はテフロン銀メッキ線。もちろん良音質極性にて配線しました。
This is a photo of the finished crossovers. For the filters, we used Mundorf Mcap EVO SilverGold Oil capacitors and fine met cut core inductors on all four frequency ranges. We wired them using teflon silver plated wires. Of course each components were wired in the best sounding polarity.


低域、中域フィルター用コンデンサーパネルをスピーカーキャビネット内部へ組み込みます。
These are the capacitors for the low and mid frequencies being placed inside the speaker cabinet.

これは背面端子+セレクタースイッチパネル。
This is the rear board for the binding posts and the rotary switch.


中高域、高域フィルター用コンデンサー及びコイルは予めチューニングの際に決めた位置に取り付けます。コイルの取り付け位置やパーツの極性が及ぼす音質への影響解説動画はこちら
The board with the capacitors and inductors for the mid-high and high range driver filters are placed in the position we have decided on, when we were tuning the crossovers. You can hear for yourself the difference the positioning of the coil and the polarity of the components makes in the link below.
https://www.youtube.com/watch?v=6J7qd2CK4_E

次回、完成した写真をアップしたいと思います。
In my next blog I will post some photos of the finished speakers.

JBL C36 ヴァイカウント用ネットワーク(130A+LE175) Crossovers for JBL C36 Viscount (130A+LE175)

こんにちは、ケンリックサウンドの熊木です。
Hello, this is Kumaki from Kenrick Sound.

今日のブログでは先月作業が完成したお客様のJBL C36 Viscount用カスタムネットワークのを紹介します。
Today, I would like to share the custom crossovers we made for a customer's JBL C36 Viscounts.

こちらがネットワークに使用したパーツです。
These are the components we used.


以下の写真は全てのカスタムネットワークで行う、チューニング作業の様子です。コンデンサーやコイルの定数はもちろん、フィルター用のコイルの取り付け位置も入念にテストを行い、決めていきます。コイルの取り付け位置やパーツの極性が及ぼす音質への影響解説動画はこちら
Below is a picture of the crossovers being checked and fine tuned. Not only do we decide on the capacitance and inductance of the components, but we also test on the placement of the components, since this aspect is just as vital to the sound outcome. You can hear for yourself the difference the positioning of the coil and the polarity of the components makes in the link below.
https://www.youtube.com/watch?v=6J7qd2CK4_E



【JBL Viscount 130A+LE175用 ネットワーク使用パーツ】
・Mundorf Mcoil(低域フィルター用)
・Mundorf Mcap EVO SilverGold Oil コンデンサー
・トランス式アッテネーター
・背面大型金メッキ端子
・4N 純銀単線配線

[ Components used for the 130A+LE175 crossovers ]
*Mundorf Mcoils for high frequency filters
*Mundorf Mcap EVO SilverGold Oil capacitors
*Transformer type attenuators
*Gold terminals
*4N pure solid silver wires

ケンリックサウンド10周年記念スピーカー KRS 4351ネットワーク作業 Crossover works on KENRICK SOUND 10th Anniversary KRS 4351

こんにちは、ケンリックサウンドの熊木です。
Hello, this is Kumaki from Kenrick Sound.

今日は3月にアメリカ合衆国へ納品予定のKRS 10th Anniversary 4351に行ったネットワーク作業を紹介します。
Today I will be showing you our work on the KRS 10th Anniversary 4351 which is to be delivered to the U.S. in March.

通常の4351はバイアンプで鳴らす仕様となっていますが、今回10周年記念モデルということでシングルアンプ接続でも鳴らせる様に変更を加えています。
Normally, the 4351 is a bi-amp speaker, but for this 10th anniversary special edition, we have modified it so it could be single amp driven.

こちらがシングルドライブ、バイアンプドライブやバイワイヤリング接続に対応するために取り付けたロシアンミリタリースペックの切り替えスイッチです。セレクタースイッチに関しての詳細はこちら
This is the rotary switch that was installed to switch between single amp mode, bi-amp, and bi-wiring mode. 


この写真はネットワークのパーツ決めを行うために仮配線をし、様々なコンデンサーやコイルの組み合わせを試している様子です。
This is a photo the crossover being tested. We test and choose from infinite combinations of capacitors and inductors.


代表の細井、技術担当の河内と総力をあげてベストなネットワーク回路を決定します。
I work together with our president Hosoi, and production engineer Kawachi to create the best crossover schematic possible.


2021年2月19日金曜日

お客様からの差し入れ、D130+075用ネットワーク Delicious sweets given to us by a customer and recently completed crossovers for the D130+075

ケンリックサウンドの熊木です。
This is Kumaki from Kenrick Sound.

こちらの写真はお客様からいただいた差し入れのお菓子です。ザクザクとした触感が癖になり、とても美味しかったです。お心遣い、いつもありがとうございます。
These snacks were given to us by a customer who came by the other day. They were very delicious and we appreciate your kindness very much.


こちらは先日作業が完了したD130+075 2way用スペシャルネットワークです。
This is a photo of the special crossovers for the D130+075 setup that were completed recently.




【D130+075用 ネットワーク使用パーツ】
・ファインメットカットコアコイル(高域フィルター用)
・Mundorf Mcap EVO SilverGold Oil コンデンサー
・トランス式アッテネーター
・背面大型金メッキ端子
・4N 純銀単線配線

[ Components used for the D130+075 crossovers ]
*Fine met cut core inductors for high frequency filters
*Mundorf Mcap EVO SilverGold Oil capacitors
*Transformer type attenuators
*Gold terminals
*4N pure solid silver wires

おかげさまで修理のご依頼もたくさんいただいております。
We are receiving many repair requests, thanks to all of our customers.

スピーカーユニット梱包用段ボールキットの出荷準備をしている鈴木氏。
This is a photo of our packing specialist Suzuki readying the packing material for the speaker drivers.


修理のみならず、スピーカーシステムの予約注文も受け付けておりますので、購入を検討されているスピーカーがございましたら、是非ご相談ください
We are also taking pre-orders for speakers, so if there is a particular model you are interested in, give us an email from our website.

2021年2月18日木曜日

JBL 4343用ネットワーク作業の様子 Recent work on JBL 4343 crossovers

ケンリックサウンドの熊木です。
This is Kumaki from Kenrick Sound.

本日のブログではJBL4343用カスタムアップグレード3143ネットワーク作業の一部を紹介します。

In today's blog, I will be showing you some of the work we do on the 3143 crossovers for the JBL 4343s.

こちらの写真は作業前の純正ネットワークです。
This is a photo of the original 3143 crossovers.


コンデンサーの交換やコイルの調整をするためにスチールケースからネットワークを取り出します。
In order to change the capacitors and tune the inductors, it is necessary to remove the crossover from it's steel case.


分解し終えたら、使用する各パーツの良質方向性を特定するため一つ一つ音を聴きながら判断します。難易度が高く地味な作業ですが、良い音作りには欠かせない、とても大切なプロセスです。
After we take everything apart, we must check which is the correct direction for each components to be wired to achieve the better sound by listening to them one by one. Sounds simple, but it is actually very difficult and absolutely essential.

こちらは交換を終えて配線待ちのロシアンミリタリースペックセレクタースイッチと大型金メッキ端子です。左に写っているのは純正のセレクタースイッチスイッチです。セレクタースイッチに関しての詳細はこちら
This is a photo of a new Russian military spec rotary switch and gold terminals waiting to be wired. On the left you can see the original rotary switch.


純正のアッテネーターを取り外し、新品のアッテネーターへ交換します。
This is a photo of new L-pads also waiting to be wired.


最高な状態のスピーカーユニットを活かすには、信号の通り道となるネットワークの品質はとても大きなファクターです。スピーカーユニットの修理をする予定の方は、そのタイミングでスピーカーのフルレストアもお考えになってはいかがでしょうか。
To get the best out of our perfectly restored speaker components, having your crossovers restored and tuned by us is important. If you are thinking about fixing your speaker components, we recommend you have your speakers fully tuned by us.

2021年2月14日日曜日

1年越しの壮大な特殊修理がついに完遂! JBL Project K2 S9500 お客様の声 北海道・加藤様 JBL 1400Nd ネオジムウーファー修理+マグネット新品製作






【お客様のコメント】

札幌市の加藤と申します。大学生の頃から、オーディオが好きで楽しんできました。長岡先生のスピーカーもたくさん自作しました。

30歳になったころに、雑誌で見たのがJBL K2 S9500でした。バーチカルツインのウーハーや、アクリルのホーンなど、音は聞いたことがありませんでしたが、どんなにすごいのだろうとあこがれていました。しかし、価格もハイエンドでしたので、いつかは欲しいと思いながらも手に入れることはあきらめていました。

当時持っていたスピーカーが、ダイヤトーンのDS-200HR。その数年後に、パイオニアのS5000twinのやはりバーチカルツインを仮想 S9500として使用していました。

初めての出会いから、30年。やっとK2 S9500を、ネットで某オーディオショップで見つけて、手に入れることができました。やっと夢がかなった、憧れのスピーカーが手に入った。ワクワクしながら、音を出しました。

聞いているうちに、右のチャンネルからガサガサという雑音が聞こえてきました。CDプレーヤーを疑い、修理に出してもダメ。アンプを交換してみてもダメ。結局、右の上のウーハーが原因で雑音が出てきているのが分かりました。

ウーハーを交換しなければならない。そう考えて、ネットで検索しましたが、30年前のパーツは全く見つけることができませんでした。

その中で知ったのが、ケンリックサウンドさんでした。

JBLのスピーカーを、レストアして蘇らせていると知って、相談の電話をさせていただきました。症状をお伝えして、ウーハー4本のエッジを交換していただくことになりました。

しかし、実際には、このウーハーはとんでもないことになっていて、ボイスコイル周りのハウジングやマグネットが、錆びだらけになっているということでした。しかも、4本ともです。

メールに写真を添付していただき、症状を説明していただきながらの、修理となりました。詳しく説明していただけたので、安心してお任せすることができました。

最終的には、マグネットの新規製作・新品交換!までしていただき、約1年間かかりましたが、立派に直していただきました。本当にありがとうございます。

普通ならば、ここまで悪くなっていれば、『無理、修理はできません』となっても、おかしくないです。しかし、ここまでやってくださったのは、本当のプロ意識と、高い技術をお持ちだからだと思います。

しかし、湿度が高い日本では、錆びによって同じような悩みをお持ちのオーナーさんもたくさんいらっしゃるのではないかと思います。機械式の腕時計は、定期的に分解清掃が必要と聞きますが、スピーカーも同じなのかもしれません。愛着を持ったモデルを、長く使うためにはケンリックサウンドさんのようなプロのショップがいてくれて心強いです。

届いてから早速、組み上げて音を出しました。

10.5畳の狭い部屋ですが、いい音でなってくれています。K2は、マッキントッシュのシステムで鳴らしています。

ピンポイントの定位と、リアルな音、そして部屋に広がっていく音、(JBL DD66000も所有しているのですが、音の広がりはこちらの方が良い、好みと思います。)バーチカルツインならではの良さにやっと浸ることができました。部屋の限界はありますが、大音量でもびくともしません。小音量でも、音がやせることなく楽しませてくれます。

まだまだ、セッティングなどこれから改善の余地はありますが、安心して音楽を楽しむことができます~♪これは、ずっと使っていきたいと思います。

ケンリックサウンド様、本当にありがとうございました。



【ケンリックサウンドからのコメント】

加藤様、この度はJBL Project K2 S9500(1400Ndネオジムマグネットウーファー)の修理依頼、誠にありがとうございました。ここ最近継続して問題が発生している、いわゆるネオジムマグネットコーティング劣化に伴う不良のため、最終的にはマグネットそのものを新規に作り直して組み替えるという大がかりな作業にまで発展いたしましたが、1年を掛けて無事に全てが完了し、やっと安心しました。

今回、加藤様から頂いた修理ご相談から、点検と現状の報告から修理方針のご提案までの1年を振り返りながら記述いたします。

【2020年2月17日】
(加藤様より電話で修理ご依頼)
プロにお任せ出来て、本当に助かりました。治せるものなのか、あきらめなければいけないものなのか、すっきりできると思います。でも、出来ればこれからずっと、クリアーに鳴ってほしいものです。ぜひぜひ、修理のほどよろしくお願いいたします。

【2020年2月25日】
スピーカーユニットを点検したところ、歪みなく鳴るものはウーファーユニット4本中の1本のみでした。エッジとダンパーを交換し、再芯出しを行うことによって異音は解消できます。人工セーム革エッジに交換することによって、よりしなやかにコーン紙が振幅できるようになるので、音質の向上も望めます。ウレタン素材の様に経年劣化する心配もありませんので、半永久的に使用することができます。特性を合わせるために4本同時の交換となります。コーン紙の縁が剥げているものがあるので、着色することによって目立たなくすることができます。端子部分がぐらついているものが2本あることと、センターキャップに一部接着不良がありましたので、これらはサービスで補修いたします。

【2020年4月22日】
エッジとダンパーを外してマグネットを確認しましたところ、内部メッキ面に大量の腐食が見られました。ギャップ内にも入り込んでいるため、クリーニングを進めております。





目に見える腐食以外にもギャップ内に相当な錆が発生しておりまして、除去を進めている状態です。コーン紙側は新しいダンパーを以前より適正な高さに接着しましたので、ギャップのクリーニングができ次第組み込みを行います。



【2020年5月28日】

現在やっと3台の修理が完了致しました。しかしながら、4台目のコーン紙Assyをマグネットフレームに組み込み芯出し行う作業で、どうしてもボイスコイルが当たってしまい正常な芯だしが出来ませんでした。原因を探るべく注意深く調べた結果、問題が判明しました。全般的に錆が多く発生していましたが、特にこの個体はマグネットとセンターヨークの間に多くの錆が発生しており、この錆びによりマグネット体積が膨張して、その上にある中心のヨークを持ち上げてしまい傾いた状態です。この影響でボイスコイルは入る隙間が偏心してコイルが当たっております。この状態は恐らくお預かりする前から起きていたかと思われます。音がビリついていた要因がここにあります。この状況を写真を添付致します。御確認下さい。

マグネット修理の方法は唯一下記になります。

【1】マグネットを脱磁して磁力を抜きます。
【2】センターヨークとマグネットの接着剤を剥がして、錆と古い接着剤を削って取り除きます。センターヨークとマグネットを平行とギャップが均等になるように接着します。
【3】新たにマグネットを着磁して磁力を回復させます。




センターヨークとアウターヨークのギャップが偏心


センターヨークが傾き飛び出している


マグネットとセンターヨークの間に発生している錆


内部の錆

【2020年7月2日】

マグネットの脱磁を行うためにマグネットAssyをアルミフレームから抜き出す必要がある事が分かり、抜き出しに難儀しました。上手く抜き出して脱磁、分解するとマグネット固定に用いられる接着剤が酷く劣化しており、且つマグネットの水平がずれておりました。古い接着剤を全て剥がして、水平が出る事を確認後に、ギャップのセンター出しを行い再接着を無事に完了しました。

残る作業は、再びマグネットを着磁する事です。実際に磁束密度を測定して、正しく磁力回復していることを確認したらフレームに圧入してフレーム組み込みが完成します。その後にコーン紙Assyを組み込めば完成となります。


ネオジムマグネットAssyを抜き出す


ネオジウムマグネット分解


マグネット接着面


マグネット接着面クリーニング


マグネット再接着


マグネットギャップクリアランス・センター出し

【2020年10月2日】

先日、1400Ndのマグネットに磁界を与えて磁力を元に戻す作業を進めておりました。ご報告致しました様に、特殊な磁気材料に対して正確に着磁する専用治具は設計・完成しました。その効果があり、着磁の磁力は強くなって随分復活しました、しかしながら本来戻るべき磁力は7,000ガウスほどであるところ、現状は3,600ガウスしか回復がしませんでした。

原因を調べると、旧来のマグネット(アルニコ、フェライト)は脱磁しても再度強力な磁場を加えると磁力が回復しますがこのJBL 1400Ndに使用されているネオジウムマグネットは強力であるが故に磁気特性が従来とは大きく異なり、規定の磁力には再び戻らない場合があることが判明しました。

今回の着磁治具と着磁装置で限界の磁界を与えてほぼ飽和点までは達しました。ところが、期待値まで引き上げることが困難だと判断しましたので、いよいよ新たなネオジウムマグネットを作製して現在のマグネットと入れ替える事に致したいと思います。現代のネオジウムマグネットはJBLが1400Ndを設計した1990年当時よりも特性が良いため、左右特性を揃える為に2本ペアで交換することに致します。

早速マグネットメーカーに問い合わせして、製作の打ち合わせを行います。


1400Nd専用設計の着磁用治具


着磁セット状態


着磁後の磁力不足状況

【2020年11月11日】

本日、やっとネオジウムマグネットが納入されました。現在は円盤形状のままですので、ボイスコイル冷却の為に設けられているエアベント=エアー通路確保のために、R11の切り欠き加工をこれから行います。ネオジウムマグネットは硬くてかつ脆いので、十分に注意して加工を進めます。この加工が無事に出来たらいよいよマグネットに接着組み込み、そして着磁作業に移ります。


新規製作完了したネオジムマグネット(高耐久ブラックエポキシコーティング済み)

【2021年1月14日】

1400Nd・ネオジウムマグネットの切り欠き加工がやっと出来ました。材料が思ったよりも硬く加工に難儀しましたが、何とか完成しました。早速マグネットを接着して芯出しを行い、明日いよいよ着磁作業を行う段取りです。着磁が成功すれば後の工程は速やかに出来る思います。年を越してしまいましたが、新しいマグネットで良い音を楽しんで頂ける様に頑張ります。もう暫くお待ちください。



【2021年1月21日】

作業の状況を報告致します。先日のネオジウムマグネットの着磁は上手くいって磁束密度は目標値をクリアーする強力な磁力線が得られました。早速のマグネットをアルミのフレームに組み込み、コーン紙Assyを組み込む作業を行いました。結果、1本は素晴らしい音が蘇りました。しかしながら、もう1本を組み込んで音だし確認をした結果、出音に歪が乗る問題が発覚して、先ほどまで原因を究明していたところです。どうやら私がマグネットを接着する際に塗布した接着剤の量が少し不足していたことに原因があるようです。接着剤のはみ出しを気にするあまり分量が足りなかった様です。大変申し訳ありませんが、来週に再度接着して再び着磁を行う予定です。お待たせしており恐れ入りますが、もう暫くお待ちください。


着磁後の測定1


着磁後の測定2


コーン紙Assy

【2021年1月26日】

大変長らくお待たせ致しました。本日全てのウーファーが完成しました。素晴らしい状態で、音も良いと思います。1本歪み音が発生していた原因はマグネットの接着不良ではなくて、内部のアルミのリングの浮きが原因でした。しっかり固定し直すと歪み音は直り、素晴らしい音が蘇りました。修理完了後の写真を添付します。




ギャップセンター調整後


JBL 1400Nd 完成背面側


JBL 1400Nd 完成正面側

マグネットの背面の写真で裏側に4個所穴埋めの痕跡が残っていますが、この穴はマグネットブロックをスピーカーフレームから抜き出す際に裏側から押し出す目的で開けた穴の跡です。この方法を使う以外にマグネットを抜き出せないため、どうかご了承ください。また正面のエッジが貼ってあるスピーカーフレーム内側に数カ所の塗料剥がれが起きておりますが、お預かりした時点から見受けられるものなので、敢えて修理は行ってありません。よろしくお願いします。

今回の修理に関しては、昨年の2月17日から既に1年間が経過してしまいましたが、修理をお受けした時は1400Ndにこのような問題があるとは全く気づかず、実際に作業を進めて行くと予想外の事が次から次と発生し、原因究明と対策部材の設計、試作、トライアルと、その繰り返しで大変長時間に渡りお待たせして申し訳ありませんでした。修理費用は当初の予想を遙かに超えるほどとなりましたが、正規メーカー他、どこでも修理不可能な中、ケンリックサウンドでの修理方法が確立して本当に良かったと思います。これもひとえに修理納期が長引く事に対して加藤様より快諾して頂いた結果でもあります。ご協力に改めて感謝致します。

到着して何かあれば必ず御連絡ください。今後、音楽を楽しんで頂けたら嬉しいです。

【2021年2月8日】

(加藤様より感想文とお礼としてルタオのチーズケーキをお送り頂く)
ルタオのチーズケーキが届きました。過分な物を頂いて感謝します。感想文には加藤様がS9500を入手されてからの経緯が記されており、修理の過程がよく分かりました。今回の1400Ndの修理をお受けしたときにはまさか、ネオジウムマグネットにこのような問題点があるとは全く認識しておらず、修理を進めるに従って従来のアルニコやフェライトとは全く異なる強力なネオジウムならではの磁力が抜けない、錆びてマグネットが痩せ細ってしまう、磁力が入らない、などなど幾多の困難な事項が次から次に発覚してしまいました。

しかしながら諦める訳にはいかず、私の48年間の技術力と経験でチャンレンジを繰り返してやっと目標を達成したときは1年の月日が経過していました。加藤様が結果に満足してくださり、本当に心から嬉しく思いました。これで同じような事例の修理方法が確立しましたので、逆に感謝の気持ちです。475Ndドライバーなどもネオジウムですが、今後も何かあれば御連絡ください。憧れのK2 S9500で音楽をお楽しみください。ありがとうございました。

ケンリックサウンド 技術担当・河内