2021年3月17日水曜日

お客様の声 東京都杉並区・高橋様 JBL S3100 出張修理点検、ドライバー逆位相入れ替え、電源良質極性統一ほか



【お客様のコメント】

ケンリックサウンド 代表取締役
細井研志 様

本日3月16日は来宅して頂き本当に有難うございます。大変助かりました。

JBL S3100は1998年に新品で購入し、最初はLUXMAN L540で、後にLUXMAN C-8f + M-8fでドライブしてきました。当初から右側スピーカーの出力が弱いような印象を持っていましたが、何せ仕事が忙しく、部屋の環境か、アンプなのか原因を追求する暇なく過ごしてきました。

昨年の2020年にウーハーのエッジ交換・磁気回路オーバーホールをしたのを機会に腰を据えて取り組んで来ましたが、素人であることの限界も感じておりました。

おそらくネットワークであろうと予測して、ケンリックサウンドさんに電話したところ、このスピーカーシステムを送る前に、下見をしてくださるとのことで早速お願いしました。細井社長の猛烈な集中力によるあらゆるシステムのチェックの結果、私にとって大ショックだったのは右側キャビネットのホーンドライバーと38cmウーハーとが逆位相の接続になっていたことが判明したことです。

23年もの間、逆位相で聴いていたなんて嘘みたいな話です。もう一つ、バランス接続の出力がアンバランス(左右に大きなレベル差ありの意)になっていて、アンバランス接続にしたらバランスしたというオヤジギャグにもならないような珍現象も発見して頂きました。その他電極の位相等細かいところまでチェックして頂きました。

その結果、クラッシックを聴く私には、素晴らしい弦の再現と余韻が体験できることになりました。持っているCDをすべて聴き直したい気分です。それどころかLPにまで手を出すと、ただでさえ短い余生がいくらあっても足りないことになりそうです。

勿論、このスピーカーシステムをケンリックサウンドさんにとりあえず送らずに済みましたが、多分、私の予想ですが、執行猶予付きとなるのでしょう。しかし、細井社長に感謝です。

今後ともご指導宜しくお願い申し上げます。

東京都杉並区
高橋



【ケンリックサウンドからのコメント】

高橋様、この度の出張点検修理のご依頼誠にありがとうございました。

お問い合わせを頂戴した翌日にちょうどタイミング良く伺うことができ、また懸念していたスピーカーシステムごとお預かりして大修理ということにも至らず、問題の解消に加えて、音質の相当なる改善とグレードアップが図れましたので良かったと思います。

お電話では、スピーカー音量レベルに左右差があり右側の音が小さいということでした。アンプとの結線は左右で入れ替えて頂いているかの確認をしたところ、プリアンプ、パワーアンプともにメーカー点検で問題なしという結果があり、やはりスピーカーが疑わしいとのこと。

しかし、アンプのレベルメーター振れ幅にも左右差があり、右側がやはり小さいと伺った段階でスピーカーではなく、アンプ、プレーヤー、接続ケーブルを含めたパワーアンプ以前の問題ではないかと考えながら当日の点検となりました。

到着してまずは普段お聴きになるCDを再生して頂くと、一聴して3秒で右スピーカーの相対位相がおかしいことに気づきます。右耳をJBL 2426H、ドライバーへ、左耳をJBL ME150H、ウーファーへ、同時に近づけて確認すると、左チャンネルはいずれも正しい位相関係であるのに対して、右チャンネルはドライバーとウーファーが180度ずれていることが聴いて分かります。試みに、背面端子のLFとHFを繋ぐバスバーをクロスして接続することで簡単にドライバーの接続を逆転せさせてみると現象は改善されました。

ウーファーエッジを最近交換されたそうですが、取り外し、取付時に結線は間違っていないとのこと。確かにドライバーの問題ですからウーファー結線は関係ありません。内部を開けて確認すると、ネットワーク回路、ドライバーへの結線、いずれも間違ってはいません。端子部結線を入れ替え対応することといたします。今回はドライバー内部まで分解確認を行っておりませんが、恐らくダイアフラムとバックカバーにある端子との結線が逆転していることが原因だと思われます。2426Hにはダイアフラムのガイドピンが立っておらず、取り付け方向に自由が効きます。これでプラス、マイナスの入れ替わりが起きていると考えるのが妥当です。それ以外には、マグネットのセンターがS極とならねばいけないところ、逆着磁によりセンターN極となっている場合も同様の問題となりますが、その可能性は低いでしょう。

いずれにしても、新品でご購入時から20年以上もこの状態でお聴きになっていたということですが、無理もないことだと思います。普通はそんな問題が起きていることなど想像も付かないでしょうから。特に、3ウェイ、4ウェイ、5ウェイなど、ユニット数が増えればなおさらでしょう。このブログをご覧になっている方々も、同様の問題を疑った方が良いかも知れません。ただし、中々一般の方がユニット単位で正しい位相を耳によって判断するのは至難の業ですから、位相チェッカーを用いるのもきっかけを掴むことには役立ちます。ただし、各ユニットが示す位相は、スピーカーシステム全体を通して、一律で正相なのか逆相なのかということではなく、例えばJBL 4344のように、LF=逆相、MF=正相、HF=正相、UHF=逆相、という関係も存在します(このうちUHFのみが3次HPFを通ることによるネットワークがもたらす位相変化で、MF、HFは、単純な結線のみでの逆転)。

それともう一点の改善ポイントは、絶対位相の良性方向。これはお使いのスピーカーシステム、そしてアンプの組み合わせによって、セオリー通りアンプのプラス端子からスピーカーのプラス端子へ繋ぐのか、あるいはアンプのプラス端子からスピーカーのマイナス端子に繋ぐ方が良好なのか、全て異なります(もちろん左右ともにセットで)。高橋様の場合は、後者の逆転接続の方がより伸びやかで余韻が残り、自然な鳴りであることが分かりましたので、結線をアンプ側で入れ替えました。

実は、右チャンネルの音量レベルが低いという問題は、前述のドライバー相対位相が異なっていたこととは別に生じていたことです。点検すると、プリアンプのバランス出力のみ異常であることが分かりました。そこで、バランス接続はやめ全ての機器をアンバランス接続に変更します。多くの場合、アンバランス接続の方が音質的有利であることも挙げられます。全てフルバランス設計のシステムで統一する場合を除き、ありがたがってバランスケーブルを用いるメリットはないばかりか、アンバランス設計で成り立っているほとんどの機器手前にある「バランス-アンバランス変換回路」を電気的に経ることによってわざわざ無駄な経路を余計に挟むことになります(家庭内の引き回し距離では外来ノイズの影響も心配無用)。

こうしてドライバー結線の修繕と左右レベル差を解消したあとは、各機器の電源極性見直しです。同時にアースループを誘発する3P電源ケーブルからアースピン排除をして、3秒の聴感のみで判定します(CDプレーヤーとFMチューナーのみ接地側をセオリーとは逆にするのが良好と判明)。

結果、最終的に出てきた音は、月並みですがこんなにも変化があるものなのか、と高橋様も驚かれるほどの違いです。何を聴いても俄然良く鳴るように生まれ変わりました。自分で言うのもおこがましいですが、これぞ価値高きプロの診断と呼べるものだと思います。

実施内容をまとめると、JBL S3100右チャンネルのドライバー逆位相とプリアンプのバランス出力レベル偏りの修繕、各機器の電源極性見直し、アースピン排除とスピーカーケーブル絶対位相反転、全アンバランスケーブルでの結線し直しと、スピーカー配置位置までの距離揃えなどです。

今回は約2時間の中で、問題の解消と今ある機器と環境を最大限生かした能力を引き出す作業に注力しました。さらに今後、スピーカー全体のオーバーホール、カスタムアップグレードなどを実施すると、いよいよもっと驚くような結果が待っておりますので、また是非よろしくお願いいたします。