2013年6月3日月曜日
お客様の声 奥飛騨温泉 旅館『元湯 孫九郎』様 ケンリックサウンド・スペシャルJBLパラゴン
岐阜県高山市にある、奥飛騨温泉郷・福地温泉の旅館『元湯 孫九郎』を経営される沖本様からのご依頼で、ケンリックサウンド・スペシャルJBL Paragon (パラゴン)を旅館のパブリックスペースに納入させて頂きました。
ここで改めてパラゴンについて記述致します。パラゴンはJBLを代表するスピーカーシステムの1つであり、正式名称は"The JBL-Ranger Paragon Integrated Stereophonic Reproductor"といいます。1957年から1983年までに約1,000台が製造され、一台一台を木工職人が手作業で製作した、幅2.6mもの家具調大型スピーカーです。現在ではとても希少価値がある音響機器の一つです。
この個体は、中期型(serial 1511)で、標準搭載ユニットは、ウーファーがJBL LE15A、ミッドレンジがJBL 375、ツイーターがJBL 075です。今回はケンリックサウンドによるスペシャルカスタムバージョンにつき、ウーファー、LE15を、初期型パラゴンにしか採用されていない150-4Cに特別変更しています。このユニットはJBL最強のウーファーと呼び声高いモデルで、軽量コーンに強力なアルニコマグネットの組み合わせにより、ハイスピードでリアリティ高い表現が可能となっています。
弊社にて特別製作したステンレス削りだしの075用ホーンと、ステンレス削りだしの375用バブルバックを採用することで、僅かな信号への反応を実現しています。ダイアフラムはベリリウム製。軽くて硬いベリリウムは、他の材料に比べ、反応が早く、より高い音まで再生できるのが特徴です。従って、レスポンスが良いウーファー、150-4Cとのマッチングが最高です。広いレンジと速いレスポンスで生々しい出音を聴くことができるのです。アルニコ磁気ユニットは全て再着磁を施し、各ドライバーユニットも分解清掃、ネットワークのコンデンサー、アッテネーターも新品交換、ビス類は全て新品交換。配線材には全てミルスペックのテフロン銀メッキワイヤーを使っています。
バックパネルの鳴きやビビリの原因となる純正ローゼットワッシャーは、木部にめり込むことがない削りだし品に交換して調整を施すことで完全に抑えられます。センターブラケットも純正品はスチール曲げ加工の強度が弱いものであるため結合が正しく行えずに、この部分も鳴きの原因となります。
当然ローゼットワッシャーとセンターブラケットも全て新品削りだし品に交換。キャビネットを全て分解補修・塗装。最終段階の音響特性バランス調整はじっくりと時間をかけてポテンシャルを引き出しています。
キャビネットは最高級ポリエステル塗装にて仕上げています。楽器のピアノやギターと同じで、音の響きは塗装の出来映えに大きく左右されます。
このような工夫により、標準的なパラゴンには必ずといっていいほど発生するキャビネットからの異音や変な共鳴は全くせずに、ボトムエンドからハイエンドまでまさに楽器と化した音の出し方をこのパラゴンは可能にします。
数ヶ月に及ぶレストア行程と多くの吟味パーツ、ノウハウによって、そのポテンシャルを極限まで高めた、まさに至高と呼べる逸品が完成しました。
孫九郎さまの地下一階にある『音泉(おんせん)リビング パラゴン』にて、この豊かな音場と、現代に蘇るヴィンテージサウンドをご堪能できます。たっぷりの源泉とあわせて、ゆったり音楽を聴きながらくつろげるパブリックスペースになっておりますので、皆様どうぞお泊まりになってみてください。
※『音泉(おんせん)リビング パラゴン』のご利用は、お泊りのお客様専用で午後10時までとなります。
【このパラゴンに施されたメンテナンス内容】
・ウーファーLE15Aは、150-4Cに変更
・ウーファー×2本、ドライバー×2本、ツイーター×2本 再着磁済み
・375用ベリリウムダイアフラムを採用
・ネットワークLX5、N7000、コンデンサー新品交換
・ネットワークのアッテネーター新品交換
・配線材にテフロン銀メッキワイヤー採用
・ステンレス無垢削り出し075ホーン×2本
・ステンレス無垢削り出し375バックカバー×2本
・ステンレス無垢削り出しセンター結合金具×6個
・バックカバー(パーチクルボード)凝固浸透液、充填済み
・バックカバー固定ボルト用ワッシャーに真鍮無垢ローゼットワッシャー採用
・全てのボルト新品交換
・キャビネット最高級ポリエステル塗装
・音響特性チェック・エージング鳴らしこみ
・リフレクターパネルの受けスリット・フェルト新品交換